2012年ハローアルソン・フィリピン医療ボランティア活動報告書
2012年2月10日 入れ歯に込めるハロアルの思い
「あと、残り15分――!」
最後の患者を向かい入れるため今西先生が誘導します。
いくつかのブースでは片付けが始まり、いよいよこの活動が最終を迎えます。
そして一人の女性が検診ブースに歩み寄ります。
「上の歯を2本抜いて欲しい。」
「どうしてしっかりしている歯を抜きたいの?」
「全部歯を抜いて入れ歯を作った方が安いから、もう何年も歯がないからこの際抜いて欲しい」
つまり部分入れ歯は値段が高く買う事が出来ないため、総入れ歯にしたいとのことでした。
そのお口を見て今西先生が会長 林先生の判断を仰ぎます。
「先生、この患者に日本から準備してきた器材でこの場で入れ歯を作っても良いですか。」
時間的な問題もさることながら、このような状況でしかもその場で入れ歯を完成させることは日本では通常大変難しいとされています。
しかし今回3回目の参加となった歯科技工士の田端さん、初参加の浅水さんのコンビが林先生の指示の下、入れ歯を作っていきます。
少しずつ片付けが終わった先生たちがこの最終ブース「入れ歯作り」を見学に来始めました。
私達の活動の歴史の中で初の試みとなったこの「入れ歯づくり」は、日頃往診先で林先生と共に数多くの患者さんの入れ歯を作り、治してきた日本での経験が成せるものです。
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さっきまで歯を抜いてくれと言っていた女性は少しずつ完成していく自分の入れ歯に驚きながらも、とてもうれしそうです。それもそのはず、本当なら歯を抜かれ、ひとつ約1,500ペソ(3,000円)の費用がかかる入れ歯を入れなければならなりません。一日働きたった200ペソの彼等には到底手の届くものではないからです。
そして林先生がかみ合わせを調整し、ついに完成しました。
会場からはいつしか大きな拍手と歓声が沸き上がっています。女性は嬉しそうに鏡を見ながら何度もお礼を言い、彼等を抱きしめます。
今回製作した入れ歯はたった一人のたった一つの入れ歯でしかありません。
過去をさかのぼれば入れ歯を必要とした患者は大勢いました。
しかし、私達はその時その時、できるだけのことを全力でおこなってまいりました。そして会発足11年という年月を経て、一人の女性に入れ歯を提供することが出来ました。この新たな1歩が踏み出せたことはまさしくこの活動の理念でもあるように、日本での361日の賜物なのではないでしょうか。
田端さんや浅水さんの照れくさそうにその女性と写真に写る笑顔が何とも言えません。
しかし私が一番印象に残ったのは、たんたんと義歯を作成し完成までの指示をおこない、この治療も日々日本で行っているものと何ら変わりのないように処置を行う林先生の涼しげな表情でした・・・
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